種の保存の法則について
今回は種の保存の法則についてお話したいと思います。
種の保存は、あらゆる生き物に課された大切なテーマです。
菌も原虫も。イヌもネコも、私たち人間も、
そのテーマをより確かなものにするために
進化してきたといっても過言ではないです。
だからこそ、生き物は種を保存するために、
さまざまな戦略を駆使しています。
トキソプラズマは、ほとんどすべての恒温動物に感染する
寄生虫です。
通常は帰省している動物の細胞内で無性生殖によって増えていきます。
しかし、有性生殖によって新しい卵(オーシスト;接合子嚢)を
作れるのはネコの細胞の中だけです。
つまり、トキソプラズマはネコからネコに移動しないと子孫を増やしていけないのです。
では、
「トキソプラズマはどのようにネコからネコへ移動するのか?」
まず、トキソプラズマの卵はネコの糞に混じって排泄されます。
にできている卵は過酷な環境下でも最長18ヶ月間は行き続けるといわれています。
その間にネズミや鳥、その他の動物がこの卵を食べるとトキソプラズマに感染し、
感染した動物の生肉を食べた動物も感染します。
人間の場合、十分に加熱していない肉や水洗いが不十分な生野菜を食べた時、
あるいはネコの糞を処理した際に感染するといわれています。
動物の体内に入ったトキソプラズマは血流に乗って全身にいきわたり、筋肉細胞や脳細胞の中にもぐりこみます。
しかしこのままでは、なかなかネコの体内にたどりつきません。
そこで、トキソプラズマはネコの大好物であるネズミを利用するのです。
ネズミの筋肉細胞や脳細胞に入ったトキソプラズマはネズミを徐々に変えていきます。まず、ネズミは太って動きが鈍くなります。
そして、捕食者であるネコを怖がらなくなるのです。
さらに、トキソプラズマに感染したネズミはネコがマーキングした場所を避けるどころか、その臭いに引き寄せられていくことが多くの実験で明らかになっています。
つまり、トキソプラズマ感染ネズミは、キャットフードと化していくのです。
こうして、トキソプラズマは新たなネコの細胞の中で子孫を増やし続けてることができるのです。
トキソプラズマがネズミの脳を変化させるなら、私たち人間にも何かしらの影響を与えてもおかしくありません。
実際、その可能性が少しずつ明らかになっています。
このように、細菌や原虫が宿主の行動に影響を与えている可能性を示唆する報告は少なくなく、最近ではある種の性感染症がヒトの性行動に影響を与えることを示唆する報告もあります。
今回参考にした本は
シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス著
「迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか」NHK出版