薬剤師が知っておきたい世の中の法則

薬剤師が知っておきたい世の中の法則について紹介します。

科学的思考の法則について

医学や薬学の司会では大規模なランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)はエビ伝巣レベルが高いといわれています。

ともすれば、RCTが価値の全てと考えているような批評を目にすることもあります。

自分の意見を主張するために

「RCTでのエビデンスがない」

と批判する人も少なくありません・・・

 

本当にそうなんでしょうか??

 

内科医で感染症治療が専門の岩田健太郎先生は

「RCTは微妙な問題の解決にしか役に立たない」

と指摘しています。

 

確かに、東京から名古屋まで行くのに新幹線と自転車ではどちらが早いか?

致死的な重症感染症抗生物質が必要か?

といった結果や効果がはっきりしていて疑いようのないものについてRCTは不要です。

しかし、

現在の薬物治療はとても微妙な問題を扱っているのでRCTが必要になるのです。

 

例えば・・・

 

高血圧の薬、糖尿病の薬、脂質を改善する薬などは効果があるかどうか一目瞭然でない微妙な薬です。

もちろん、高血圧の薬を飲めば血圧は下がり、糖尿病の薬を飲めばHbA1cは改善しますが、高血圧や糖尿病、脂質異常症を治療するのは脳・心血管イベントなどの合併症を予防することが目的です。

しかし、高血圧などで脳卒中心筋梗塞を起こす方は決して多くはありません。脳卒中心筋梗塞も起こさずに寿命を全うする高血圧患者さんを集めてRCTを行わないと降圧薬の微妙な効果を明らかにすることができないのです。

一般的に大規模な臨床試験は小規模な臨床試験より価値が高いと考えられています。

しかし、大規模な臨床試験とは「何万人も集めないと両群の差が明らかにならない微妙な研究」とも言えます。

本当にその薬が劇的に効くなら数十人に飲ませても効果は一目瞭然でしょう。

それが、数万人で比較しないと差が明らかにならないのは、その薬の効果が微妙だからとも考えられます。

つまり、小規模な臨床試験で効果が明らかになった薬より、大規模な臨床試験でやっと効果が認められた薬は明らかに効果が低いともいえるのです。

もちろん、臨床試験が大規模化する背景には研究成果としてのエビデンスに求められる「客観性」の水準が高くなってきたこともありますが大規模なRCTの結果が何を意味しているのかを正確に理解することはとても大切です。

RCTで得られたエビデンスを治療に生かすには、結果の解釈がポイントになります。

RCTでは治療群の効果を表す指標として、相対リスク減少率(RRR)、絶対リスク減少率(ARR)、治療必要数(NNT)の3つが用いられます。

このうち、RRRは分かり易い指標ですが実際の効果より高い治療効果があるように錯覚する場合があります。そこで、治療による恩恵を受ける人の割合を示すARR、あるいはその逆数で

「何人の患者に治療を行えば一人の生命予後を改善できるか?」

を示すNNTで結果を理解する方が実臨床に即していると言われます。