薬剤師が知っておきたい世の中の法則

薬剤師が知っておきたい世の中の法則について紹介します。

雑種の法則について

突然ですが・・・

ゾース、ピズリー、ホルフィン、カマって何の名前だか分かりますか?

 

それでは、

 

ロバ、ライオン、シマウマだったら??

 

バがロバとウマ、ライガーがライオンとトラの雑種のように、

ゾースはシマウマとウマ、ピズリーはホッキョクグマとグリズリー、

ホルフィンはオキゴンドウとハンドウイルカ、カマはラクダとリャマの雑種になります。

 

これらの雑種はどれも現存し、自然界で誕生したものもあれば、

飼育動物のあいだで繁殖されたものもあります。

 

こうした雑種がヒトの進化にも関与しているという仮説があります。

 

一般的にヒトとチンパンジーは約700万年前頃(800万年前~600万年前)に共通の祖先から分かれたといわれています。

実際、米国のニック・パターソンらはヒトとチンパンジーのDNAを比較し、その違いを時間換算してヒトとチンパンジーは平均750万年の違いがある事が明らかになっています。ところが、不思議なことにX染色体は120万年しか違いがなかったのです。

この事実は何を意味しているのでしょうか?

ニック・パターソンらは雑種の生殖能力に注目します。

雑種の生殖能力は性によって異なり。異形配偶子をもつ性(ヒトではX染色体とY染色体をもつ男性)は精子をつくれない可能性が非常に高いのです。(ホールデンの法則)

そのため、ラバ同士では繁殖できませんが、雌のラバはロバやウマの子供を産めることが知られています。

そこで、ニック・パターソンらはこう考えました。

ヒトとチンパンジーが共通の祖先から分かれて何百万年か経った時、両者は交雑するようになってのではないか?

ホールデンの法則によれば、ヒトとチンパンジーの雑種(仮にヒューマンジーと呼びます)の雄には生殖能力はないかもしれませんが、ヒューマンジーの雌はチンパンジーやヒトと交雑できます。

たとえば、ニューマンジーの雌がチンパンジーとの子を妊娠し、雌が産まれればその子は2本のX染色体を受け継ぐことになります。

一方、雄が産まれてもチンパンジーのY染色体とX染色体を受け継いでいれば、チンパンジーだけでなく、ヒトやヒューマンジーとも生殖能力の問題を抱えることなく交雑することができます。

こうして、チンパンジーのX染色体がヒトに入り込むことで、両者のX染色体だけが遺伝的に非常に近くなったとニック・パターソンらは考えました。

ヒトとチンパンジーの雑種が存在したというこの仮説は2006年6月のネイチャー誌に発表されました。当然、多くの反論が出ていますが、この仮説以外にX染色体にまつわる謎を説明する論理はまだありません。

ところで、染色体に関してはこのほかにも興味深いことが明らかになっています。

それはヒトの2番染色体はチンパンジーの12番と13番の染色体が融合したものであることです。もしかすると、ヒトがチンパンジーとの共通の祖先から分かれるきっかけは、この染色体お融合と密接な関係があるのかもしれません。

ゴリラやチンパンジーといった大型類人猿の染色体は48本ですが、ヒトだけ46本と2本少ないことが、おそらくヒトと他の大型類人猿の違いに関係しているのだと思います。ヒトとチンパンジーは99%の遺伝子が一致しているのにもかかわらず、似ても似つかぬ存在である不思議には、まだまだ多くの謎があります。

 

参考にした本は、

「チンパンジーはなぜヒトにならなかったのか」というタイトルで

講談社から出版しています。